厚木高校の「いま」を知る。—— 探究と進学、そして「何でも本気で取り組む」

12月5日に県立厚木高校を神奈川県私塾協同組合の学校訪問事業として訪ねてきました。当日は石塚教頭先生、広報担当の伊勢先生、大塚先生にご対応いただきました。校務や生徒の指導にお忙しい中、私たちのためにお時間をとっていただきありがとうございました。この場を借りてあつく御礼申し上げます。

さて、以下の記事は「どんな学校なのか」「どんな生徒に向いているのか」を、塾目線で整理したものです。わたしの印象では「勉強に厳しい進学校」というイメージの強い厚木高校ですが、いまの厚木は変化しているようです。

  • スーパーサイエンスハイスクール(SSH)としての探究活動
  • 国公立大学を中心とした進路指導
  • 海外研修や国際交流
  • 部活動や行事に本気で取り組む生徒たちの姿

など、「学力」「探究」「人としての成長」が三本柱になっている学校です。ここからは、いくつかの章立てで厚木高校の特徴をまとめていきます。

目次

第1章 SSH3期目・学力向上進学重点校としての厚木高校

厚木高校は、県の「学力向上進学重点校」かつ文部科学省指定のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受けています。

  • SSHは現在「第3期目」に入っており、約10年以上にわたって継続
  • 県教育委員会から「学力向上・進学重点校」としても指定
  • 全体として「これからの時代を生き抜く資質・能力」を育てることを重視

SSHの指定により、

  • 教育課程の特例(学校設定科目の設置)
  • 理系教員の加配(人数を手厚く配置)
  • 実験機器や消耗品、校外研修などへの予算措置

が行われており、単なる「理系に強い学校」という枠を超えた探究重視型の進学校になっています。


第2章 探究活動「ヴェリタス」——厚木高校の核となる学び

厚木高校の大きな特徴が、1年生〜3年生にわたって続く探究活動「ヴェリタス」です。

ヴェリタスの流れ

  • 1年生:探究の基礎、テーマの見つけ方や調べ方を学ぶ
  • 2年生:1年間かけて本格的な研究プロジェクトに取り組む(ヴェリタスの中心)、学会発表、コンテストなどに挑戦
  • 3年生:英語での発表、さらに希望者は探究を発展させて研究を継続させることも可能

2年生では、ひとクラスあたりおよそ 8グループ前後に分かれて研究を行い、年度末には体育館でポスター発表会を実施します。

発表会では、

  • 1グループ5〜6分程度でプレゼン
  • 参観者とのディスカッション
  • 1年生が興味のある先輩の発表を聞きに行き、「自分もやってみたい」と憧れを持つ

という循環ができており、探究の文化が学校全体に根付いています

● 研究テーマの例

理系だけでなく、文系・社会科学系のテーマも多彩です。

  • ジャガイモから特定の成分を抽出し、虫よけ効果を検証する研究
  • 交通シミュレーションソフトを用いて、交差点の渋滞をどう解消できるかを分析
  • 心理学的なアンケート調査をもとにした研究
  • 地域自治体や企業と連携した課題研究 など

生徒自身が興味のあるテーマを選び、1年かけて本格的に取り組むため、手を抜いたまま終わるグループはほとんどない、とのことでした。

先生方は「テーマの整理や方向づけのアドバイス」は行いますが、実際の中身はあくまで生徒主体。

その過程で、

  • 情報収集能力
  • ICTの活用力
  • ポスターにまとめる編集力
  • プレゼンテーション力

が自然と鍛えられていきます。


第3章 国公立志向のカリキュラムと進路指導

厚木高校のカリキュラムは、国公立大学進学を強く意識した構成になっています。

  • 在籍生徒は各学年約360名
  • 毎年130名以上の国公立合格者(ここ数年はこの水準を継続)
  • 3年生のクラスでは「ほぼ全員が国公立志望」というクラスもある

進路指導としては、

  • 各学年で年1回の保護者会・進路説明会
  • 1年生の段階から「将来やりたいこと」から逆算して進路を考える指導
  • 長期休業中の講習も充実(特に3年生はほぼ全教科で講座開講)

など、「国公立を目指す集団」として学校・生徒・保護者が同じ方向を向きやすい仕組みがあります。

● 推薦・総合型選抜との関わり

近年は、総合型選抜や学校推薦型選抜で国公立・難関私立に合格する生徒も増えています。

例としては、

  • 東京科学大学(旧東工大)
  • 筑波大学
  • 横浜国立大学
  • 都立大学 など

ただし厚木高校では、「とりあえず総合型で出してみよう」というスタンスではなく、

「第一志望の大学に総合型のチャンスがあるなら、そのチャンスを増やすために出願する」

という位置づけです。

割合としては学年の中で10分の1に満たない程度とのことで、

あくまで 一般入試+総合型・推薦でチャンスを広げる というイメージです。

ヴェリタスでの探究成果や学会・コンテストでの実績は、

志望理由書や面接で大きな武器となっており、

「大学でこういう研究をしたい。そのきっかけは高校でのこの探究活動です」

と、ストーリーを持って語れる生徒が多いのも強みです。


第4章 厚木高校ならではのカリキュラム(理系・文系ともに探究型)

SSH校として、厚木高校にはいくつかの学校設定科目があります。

● 理科の「学校設定科目」

  • 物理基礎・化学基礎・生物基礎の内容を発展させた学校設定科目
  • 通常の「基礎科目」よりも探究的な要素を強めた内容
  • 実験や考察を通して、理解を深めることを重視

文系・理系に関わらず、2年次までは理科2科目をしっかり学ぶため、私立文系の「英・国・社だけで受験したい」というスタイルとはやや方向性が違います。

その分 理系受験はもちろんのこと

  • 国公立大学文系でも共通テストにおいて理科、数学を武器にできる。
  • 文系でも得意な数学を使って受験できる
  • 幅広い教養と論理的思考力を身に付けられる

というメリットがあります。

● 数学の「学校設定科目」

  • 数学B・数学Cに相当する内容を発展させた学校設定科目
  • SSHの特例で認められた科目で、より深い理解を目指す

数学の進度は「極端に早い」わけではないものの、

内容はしっかり深めていくスタイルで、数学が好きな生徒にも十分に手応えのあるカリキュラムです。


第5章 国際交流・海外研修の機会

厚木高校では、SSHの枠組みも活かしながら、国際交流や海外研修も積極的に行っています。

代表的なものとしては、

  • ニュージーランド研修(約10日間・春休み)
    • 提携校の授業に参加
    • 現地生徒(バディ)との共同課題
    • 観光ではなく「研修」としてのプログラム
  • アメリカ研修(約10日間・4月頃)
    • SSHの発表を互いに行う
    • 科学・探究をテーマにした交流

さらに、

  • ロータリークラブの奨学金による1年間の留学
  • 各種国際交流イベント・コンテストへの参加

など、「海外で学びたい」「英語を使った活動がしたい」生徒には多くのチャンスが用意されています。


第6章 学校生活と校風 —— 「何でも本気でやる」生徒たち

先生方が口をそろえて挙げていた厚木高校生の特徴が、

「何でも全力で取り組む、生徒会も行事も部活も、全部やる」

という姿です。

  • 部活動数は30以上と非常に多く、運動部・文化部ともに活発
  • 行事(体育祭・文化祭など)の運営にも、生徒が主体的に関わる
  • 生徒会や委員会、裏方の仕事を複数掛け持ちする生徒も少なくない

一見「勉強だけの学校」に見えがちですが、

  • 授業・探究・行事・部活をマルチタスクでこなす
  • 友達どうしで助け合いながら、課題やテスト勉強を進める
  • 一人で抱え込むのではなく、横のつながりを大切にする

といった雰囲気があり、「真面目で優しい生徒が多い」という印象だそうです。

派手さのある学校(例:湘南高校の体育祭など)と比べると、

厚木高校はもう少し落ち着いた雰囲気で、

「陽キャばかりではなく、静かだけれど芯のある子が安心していられる学校」

というイメージに近いかもしれません。


第7章 特色検査と「厚木高校が求める生徒像」

厚木高校と横浜翠嵐高校は、特色検査の問題構成が同じで、毎年「最後にじっくり考えさせる問題」を置いているのが特徴的です。

これは単に「難しくしたいから」ではなく、

  • 厚木高校が育てたい生徒像
  • SSH・探究型カリキュラムで必要とされる資質

を踏まえたうえで、「どんな生徒に入学してほしいか」を反映した結果だと先生方は話していました。

つまり、特色検査を通して見たいのは、

  • 情報処理の速さだけでなく、自分の意見を持ち論理的に考える力
  • 問題の本質をつかみ、自分の言葉で表現できる力
  • 与えられた条件のもとで粘り強く考え抜く姿勢

といった部分だと言えます。


第8章 どんな中学生に厚木高校へ来てほしいか

最後に、先生方が語ってくださった「来てほしい生徒像」をまとめます。

  • 大学合格そのものよりも、「何を学び、将来どう生きたいか」を本気で考えたい 生徒
  • 探究活動に興味があり、自分の関心を深掘りしてみたい生徒
  • 行事・部活・探究・勉強など、何に対しても主体的に取り組める生徒
  • 海外や国際的な活動にも関心があり、「人と違う経験」を積みたい生徒
  • まだやりたいことがはっきりしていないけれど、3年間の多様な経験のなかで、自分の進む道を見つけたい 生徒

先生のお話の中で印象的だったのは、

「より偏差値の高い大学に行くことをゴールにする進路指導はしていない」

「本当にやりたいことのために、ふさわしい進路を一緒に考えていく」

という言葉でした。

実際に、東大に行ける学力のある生徒が、あえて帯広畜産大学を選び「馬と関わる学び」の道へ進んだ例もあるそうです。


おわりに:厚木高校を志望校として考えるときに

厚木高校は、

  • 進学校としての「学力」と
  • SSHとしての「探究」
  • 多彩な「行事・部活・国際交流」

がバランスよくそろった学校です。

「ただ勉強だけする3年間」ではなく、

自分の将来を考えながら、

仲間とともに本気で挑戦する3年間を過ごしたい

そんな中学生には、とても向いている学校だと感じました。

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