就職率ってそもそも何なの?
就職率が60.8パーセントと就職氷河期といわれた2003年にせまる勢いだという。連日のようにニュース番組では、今月に卒業をひかえた大学4年生がいまだに就職活動を続けている姿を報道している。そして、就職率の低下の理由を「景気低迷」という言葉で片づけてしまう。こんな報道を毎日のように見たり聞いたりさせられているわけだ。
ここで二つの疑問を投げかけておきたい。
1. 就職率ってそもそも何なの?
2. 大学生が就職出来ない理由って「景気低迷」なの?
今さらだが、就職率の数字は誰がどのように出しているのだろうか。ここでいう就職率は就職内定率のことで、「就職決定者数÷就職希望者」という計算式で出す数値のことだ。これらの集計は「文部科学省」や「厚生労働省」がやっているようだ。平成22年度のものは ここ で見ることが出来る。
報道等で使われている数字はどうもこの数字のようだ。そして、この数字の分母がちょっとびっくりなのだ。分母は「就職希望者」なのだが、「就職希望者」の定義は何なのだろうか。簡単に言えば「就職を希望している学生」ということなのだが、就職希望者数は例年秋口から減り続ける。大学院進学や就職留年、バイトから正社員登用を目指す学生が続出するためだ。
同時に、分子の「就職決定者数」だが、こちらもどの大学を対象にしてどのぐらいの学生を調査しているのかが気になる。実は、そのサンプルになった大学は全国約800校中わずか62校。しかも、その顔ぶれは東大、一橋、早慶、上智など有名校が中心とのことなのだ。これらの大学はそもそも就職には強いわけだ。同時に、これらの大学の学生は大手志向が強いが、さすがに年末からは中小を回り始めて就職先を決めるという。
分母は減って、分子は増える。だから、つぎの調査では確実にこの数字は上向くのだという。
それにしても、これらの上位大学を調査していて60.8パーセントということは、その他多くの大学をふくめた実際の就職率はどのぐらいなのだろう。いくつかのサイトを見てみると、「多く見積もっても50パーセントいくかどうか」というのが本当のところのようだ。さらに、厚労省などが発表する数字が今後上向いても、それは就職に強い大学の学生の調査であって、多くの大学生の実態を示していないことになる。
それほど今の状況は厳しいということだ。報道などでいわれている以上に現実の大学生のおかれている状況は厳しいのが実際だ。数字というのはその内容を考えないといけない。
さて、こうした就職難は「景気低迷」がその理由なのかどうか。それは次の機会に書くことにする。