お薦めの一冊 「そして、バトンは渡された」
学校休業で時間がたっぷりとあるでしょうから、お薦めの本を紹介していきます。今日の一冊はこれです。
主人公は高校3年生の女の子です。これまでに名字が3回も変わっています。父親は3人。母親は2人。こう書くと「なんとかわいそうな境遇の女子高生なんだ」となりそうですが、物語の筆はあくまで明るく、あっけらかんと進んでいきます。ある意味ではネット小説みたいな感覚です。
とはいっても、登場人物のキャラはそれぞれ立っていて良い味を出しています。主人公の2人目の母親や3人目の父親などはとても微笑ましく描かれています。思わず吹き出してしまうシーンがあちこちにあります。とくに3人目の父親の森宮さんと主人公の食事の場面。様々なメニューが登場してくるけど、どれも本当に美味しそうです。
Amazonのレビューなんかを読むと評価が真っ二つに分かれているようですが、この物語に感情移入をして涙をポロリ、なんてことを期待して読み始めるとみごとに裏切られるでしょう。読み終わって感動するという一冊ではないです。あくまでも「今ふう」なライト・ノベルとして読んでいけばよいと思います。
とはいっても、親子って何なのということを深く考えさせられます。そりゃあ、父親が3人、母親が2人もいて、高3になった今は血のつながりのない森宮さんという3人目の父親と生活をしているんです。血がつながっていないからこそ、二人して「親子って何だろう」って一所懸命に考えて生活している毎日がコミカルで読んでて楽しいです。
とにかく「重い」テーマを「あくまで軽く」書いた一冊です。ちょっと長いですが、一気に読めますよ。今、うちの塾の小6生たちに課題図書として読ませていますが、なんなく読み進めています。ちょっと大変なのは、さすがに3人の父親、2人の母親って設定を理解するところ。同時に、時間の設定が過去と現在を行きつ戻りつするので、小中学生には「えっ、今、誰と誰の話なの」という部分がちょっとあるかなってところです。
小学校高学年から高校生まで。すべての子どもたちにお薦めの一冊です。また、お父さん、お母さんにもです。ぜひ、親子で読んでみて欲しいです。読み終わった後で、お父さんとこどもさん。お母さんとこどもさん。いずれも絆が深まることは間違いありませんよ。