壊れる大学 2
前回も書きましたが、とにかく大学は学生集めに苦労している。大学淘汰の時代は目前で、在学中に通っていた大学がなくなってしまう、なんてことが起こりうる。というよりも、実際に起こり始めている。
90年代のはじめに200万人だった18歳人口は、120万人までに減っている。それでも大学数が増え続けているのは、大学進学率が上がっているからだ。90年代はじめには二十数パーセントだったものが、今では五十パーセントを越えるようになってきた。つまり、200万人のうちの60万人が大学生になっていた90年代から、120万人のうちの60万人が大学生になる時代をむかえている、ということだ。
今の小・中・高校生のお父さん、お母さんは、どうしても自分が18歳だった時の感覚から抜け出せないでいる。この20年間で、大学をめぐる状況は圧倒的に変わってしまったのだ。「選ばなければ誰もが大学生になれる。大学全入時代」をむかえている、ということをしっかりと理解した上で子供さんの進路を考えるべきだと思う。
AO入試という入学選抜がある。県立高校の前期選抜と同じで「自己推薦制」というものだ。この制度は今のお父さん、お母さんが最も理解しづらいものだと思う。「推薦」というのは「学校長」などが成績に応じておこなうもの、という感覚があるからだ。AO入試は「自分で自分を推薦する制度」なので、高校の成績さえ提出をもとめない。本来であれば、手間暇をかけて成績だけでない入学選抜を、という趣旨ではじめられたAO入試なのだが、現実には「青田刈り」の恰好の道具と化している。
首都圏の多くの中・小規模の大学では、夏休み中にオープン・キャンパスを開く。大学関係者が気合いを入れるのは、体験授業や講演会ではない。「個別相談」「入試相談」「AO入試直前対策」などといった「学生を早く囲い込む」ためのイベントだ。下手をすると「オープンキャンパスの中にAO入試会場が設けられていて、そこで特技を披露するなり、面接を受けるなりすると、その場で合格を出すような学校」もある。そこまでいかなくても、志願書の書き方や面接での質問事項などを丁寧に説明して「それではAO入試の時に会えることを楽しみにしています」という流れになる。
もちろん国公立をはじめとして「まじめにAO入試」に取り組んでいる大学もあるのだが、それらの大学の多くは「手間ばかりかかるAO入試」から撤退し始めているのが実際だ。そうした流れとは逆に、首都圏の私大はAO入試にチカラが入っている。AO入試なのに他大学との併願が可能、という制度をおこなっている大学さえある。こうした大学は「危ない大学」だと思って良いだろう。
以下は週刊ダイアモンドの記事です。
あまりに緩すぎる、AO入試・推薦入試の跋扈は、偏差値の高低を問わず、様々な大学の教育現場に深刻な影を落とす。大学進学者のうち、受験勉強の追い込み時期である高校3年秋時点において、平日の勉強時間(学校以外)が「ほとんどなかった」と「30分程度だった」で約3割に上る。大学への入り口が、大学を壊す大きな一因になっている。