模試の成績による合格内定
まず、高校入試というのは当日の試験によって合否が決まっている、という世間的な認知があること。入試、というぐらいなのだから、問題を解いて得点が出て、その得点によって合否が決まるのが当然だろう、という認識です。
それが全く違うということです。
多くの私立高校の入試は、もう何十年も前から、中学校と高校との間で前もっておこなわれる事前相談によって合否が決まっています。当日の入試で合否が決まる私立高校の入試はわずかだということです。この仕組みがあるおかげで、公立高校に不合格になっても、ほぼ全員が私立高校に進学して、高校浪人というのがでないのです。
事前相談の資料としては、中学校での学校成績が使われます。以前は模擬試験の偏差値なども利用されましたが、1990年代の終わり頃にそのことが大問題となり、模試の結果を高校入試に利用することを文科省が禁止する通達を出しました。
しかし、学校の成績が、相対評価から絶対評価になることで、学校ごとに成績のつきかたはバラバラになり、学校成績が生徒の実力を反映しなくなったのです。私立高校側は何とか生徒の本当の実力をもとに事前相談をしようと、英検や漢検などの資格を資料としたり、といったことをはじめました。その流れの中で、模試の偏差値の利用も復活しようとしている、ということです。
神奈川県ではそれほど顕著ではありませんが、埼玉県などでは模試の結果は普通に高校入試の資料として利用されているようです。
確かに、この塾はひどいです。模試の偏差値を上げようと事前に生徒に問題を解かす、などということをすれば、学校と塾との間の信頼関係がくずれてしまいます。だから学習塾はダメなんだ、といつものようにたたかれかねません。
このニュースのウラ側には、学習塾は悪、模擬試験による序列化は悪、といった従来からの「ありきたりなものの見方」があります。もういい加減にそうした見方はやめましょうよ。そんなことよりも、学校の絶対評価を高校入試に利用することこそ問題にして欲しいです。そもそも絶対評価は、入試のような選抜に利用するのになじみません。入試制度のすべての根っこにある問題です。
何度も言いますが、私は絶対評価を否定しません。それどころか、学校の成績は絶対評価で良いと思っています。ただ、それを高校入試の資料とするのには無理があります。そこを問題にした議論がまったく沸いてこないことこそ問題なのではないでしょうか。