小中学生の生存率99.8%は奇跡じゃない

「小中学生の生存率99.8%は奇跡じゃない」という記事が、WEDGE5月号に載っています。著作権があるので記事の内容を詳しくは書けませんが、「岩手県釜石市では、市内の小中学生、ほぼ全員が津波の被害を逃れた。多くの人たちは、これを『奇跡』と呼ぶ。しかし、そうではない。教育で子供たちが身につけた対応力が『想定外』を乗り越えさせた。」と紹介文には書かれている。文章を書いているのは、釜石市の小中学校で防災教育携わってきた群馬大学大学院教授の片田敏孝氏だ。

例えばこんな話が書かれている。地震の当日、釜石東中学の生徒たちは、校内放送などが壊れた中、自主的に校庭を駆け抜け、「津波が来るぞぉ」と叫びながら避難所に指定されている場所に移動した。隣接する小学校の生徒たちも、ふだんの避難訓練のように中学生たちに続いた。ところが、避難所は崖が崩れている。来た道を振りかえると、もうもうと土煙を上げながら津波が近づいている。中学生たちは、さらに高台を目指す。その間、近くの幼稚園から逃げてきた園児たちと遭遇し、その手を引き、幼児が乗るベビーカーを押して高台を目指して事なきを得たという。

こうした対応力は、片田氏と現場の先生方との協力による地道な教育の結果だったことが文章を読むと良くわかる。防災教育に本腰を入れる前は、生徒たちに「家で一人でいるときに地震が来たらどうしますか?」という問いに、多くの生徒たちは「お母さんに電話する」「親が帰ってくるまで家で待つ」といった回答だったという。そんな子供たちが、今回は地震時に自宅に一人でいた小学1年生でさえ、学校で教えられたとおりに避難所まで自力で非難して助かるまでになっていたという。

こうした教育の結果、小学生1927人、中学生999人の命が助かり、生存率99.8%という結果につながったという。

もうひとつエピソードが載っていた。ある中学生の女の子の話だ。彼女は自宅で一人でいるときに地震に遭遇した。第一波の地震をやり過ごしたあと、急いで自宅裏に住む高齢者の家に向かう。そのおばあさんを連れて逃げるのが自分の役目だと考えたのだ。おばあさんが逃げる準備をするのを待つ間に地震の第二波が来て、彼女はタンスの下敷きになって命を落としたのだという。これも「君たちは守られる側ではなく、守る側だ。自分よりも弱い立場にある小学生や高齢者を連れて逃げるんだ」という教えの実践だったのだろう。本当に尊い命が失われてしまった。

いろんな意味で考えさせられる記事だった。教育ということ。子供たちに教えると言うこと。そんなことを私自身もしっかりと考えたい。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次