神奈川県の公立高校入試問題の分析 4
新しい入試問題では、出題が重層構造になっている、ということを書きました。たとえば、「源頼朝によって幕府がおかれたのはどこか?」という出題は単層構造です。それに対して、「年表の(ア)の時期に幕府がおかれた場所を地図中の(1)〜(5)の中から選んで答えなさい」という出題が重層構造です。まず、年表の(ア)の時期がいつなのかを考えて鎌倉幕府のことだなと理解し、つぎにその場所を地図の中から探すのです。ステップ数が多い。問題と解答の距離が長い。解くのに手間がかかる。そんなふうに言い換えても良いでしょう。英文読解の問題もそんな出題ばかりになっています。
次の問題を見てみましょう。英文から状況を読み取る問題です。それほど難しい英文ではないのでみなさんも解いてみてください。
この問題の正答率は19.7%でしかありませんでした。英文から読み取らなければいけないことがいくつもあるのです。
*本のリクエストを出したのが6月3日(水曜日)だということ。
*リクエストをしてから本を受け取れるまで7日かかること。
*ただし、新刊書の場合はさらに5日かかること。
*日数はリクエストをした翌日からかぞえること。
*月曜日は1日と数えること。
ここまで情報を読み取って丁寧に数えていくと6月15日というのがわかります。しかし、ここにワナが仕掛けられていて、15日は月曜日なので休館日なのですね。したがって本を受け取ることは不可能です。ですから解答は6月16日ということになります。まぁ、こんな意地悪な出題そのものがかつての神奈川県の高校入試ではあり得ませんでした。
選択問題ですが、問題から解答までの距離が本当に遠いです。というよりも、ここまで問題の中から情報を取り出さないと解答できない問題を生徒たちはほとんどやったことがないはずです。学校の定期試験の問題はほとんどがステップが1つしかありません。丁寧に書かれていることを箇条書きでメモし、できれば簡単なカレンダーを書き、根気よく条件にあわせて解いていく、そんなことが出来る生徒はそれほどいるものではありません。
何が難しいのかおわかりでしょうか。英文そのものが難しいのでは決してないのです。ざっくりといってしまえば「根気よく問題に対するチカラ」とでもいってよいものをもっているかどうか、それが神奈川県の高校入試問題を解く鍵なのです。そしておかりですね。そうしたチカラが今のこどもたちには最も欠けているということを。
じっくりと正座して問題を解く。それができるようにしていくことがゼッタイに必要なのです。そうした学習というか、訓練をしないとダメなのです。