志願者倍率から見えてくるもの 1
県立高校の後期選抜試験の志願者倍率が出ました。miyajukuの生徒たちには分析したものを一覧にしてFax、メールしました。塾専用ページの方にも貼り付けてあります。したがってこちらの分析は措いておきます。
ここでは、この志願者倍率から見えてくる神奈川県の高校入試の『今』についてちょっと書いてみたいと思います。
まず、つぎの3校の倍率に注目です。
田奈高校 4.65倍 釜利谷高校 4.61倍 大楠高校 2.23倍
4倍以上の倍率は県立高校の中でトップです。ということは、この3校は進学重点校かというと、その対極にある学校なのです。偏差値は40を切ります。県立高の中で学力的には最下位の学校のひとつです。それがなんでこんな高倍率になるのか。ここに現在の高校が置かれているひとつの状況が見えてくるのです。
これらの学校は「クリエイティブスクール」というものです。今までの後期中等教育についていけない生徒たちのための学校です。高校での学習についていけないので、中学の復習からはじめる。そもそも50分の授業時間はムリなので、1時間の授業時間を短くする。勉強には興味を持てないので学校の外に積極的に出で言ってキャリア教育に力を入れる。喫煙や暴力行為への指導を強化する・・・ などなどの努力をおこなっているのが「クリエイティブスクール」です。他の都府県でもでは「チャレンジスクール」や「パレットスクール」などと名前は違っても同じような取り組みがされています。
実はこの3校は入試を実施しません。中学校の成績も見ません。人物重視で合否を判断しています。中学校から提出された記載事項や面接、作文が資料とされています。そんな学校が4倍越えの倍率になるのです。それだけこうした学校への期待や需要が『今』の時代にあるということです。さらに、定時制の高校も1.55倍の倍率が出ているのです。中でも「三部制、単位制、総合学科」という最近の高校のトレンドをすべて兼ねた「横浜総合高校」は3.92倍もの倍率が出ています。三部制というのは、学ぶ時間を「午前・午後・夜間」とした学校です。
ちょっと古い時代のお父さん、お母さんからすると、今の高校の多様化にはついていけない部分があることと思います。でも、そうした新しいタイプの高校にこれだけの志願者が殺到しているのがまさしく『今』の高校を取り巻く状況なのです。そんな時代の中に子供たちは生きていること。それをしっかりと親が理解しておく必要があると思うのです。
時代の流れというのでしょうか。長いこと教育にたずさわっていますが、この6年~8年の間におこった「多様化」の流れは「ここまできたか」と思わされるものばかりです。ある意味では今の子供たちは幸せです。これだけ多様な選択肢があるわけですから。と同時に、「クリエイティブスクール」にこれだけの志願者が殺到する時代の雰囲気に薄ら寒いものを感じてしまうのも本当のところです。