教科書で教える
昨日、中学校の教科書改訂のことを書きました。小学校ではこの春から指導要領が改訂され、新しい教科書が使われています。中学の改訂と同じようにどの教科もボリュームアップしています。新しい国語の教科書が私は大好きです。論語や平家物語などの古典なんかも掲載されています。表現のページも題材が増えています。漢字、語句の学習内容も豊富です。昨年までは教科書の内容を塾ではすぐにやり終えていましたが、今年は教科書の内容を教えるのにかなり時間を要しています。そのぐらい変わりました。
そんな小学校で起こり始めていることをご存じですか?
今までの教科書は「上限規定」でした。「教科書を教える」というのが原則で、「教科書に載っていることはすべて教える」というのが基本だったのです。それが新しい指導要領では「下限規定」に変わっています。「教科書で教える」というのが原則で、「必ずしも教科書に載っているすべてを教える」必要はなくなったのです。
このことは、指導者によって教える内容が違ってくる、ということを意味しています。実際に小学校の現場では、クラスごとに教える内容に「差」が出てきています。朝日新聞には現場の先生の「取捨選択する自信がない」「そのまま教えると子供がパンクしてしまう」などといった声が寄せられています。
国語の教科書でいえば、論語や平家物語のページをやらなくても良いわけです。逆に、そうしたページを有効に利用して授業をする先生もいるわけです。どちらの授業を受けるのか。その「差」はこどもたちにとって大きいのではないでしょうか。
こうした変化が実感されるまでには数年がかかるかもしれません。でも、この「教科書を教える」から「教科書で教える」への変化は、じわじわとこどもたちの学習に影響を及ぼすはずです。誰に教わるか、によって、教える側がどんな意図で教えるかによって、教科書の扱いがまったく変わってくるということです。
「を」と「に」の違いはとても大きいのです。