子どもたちの将来をほぼ正確にうらなう一問 その3

「子どもたちの将来をほぼ正確にうらなう一問」その3です。

「AI vs. 教科書が読めない子どもたち 新井紀子著」には、「東ロボくん」というAI(人工知能)搭載のロボットを東京大学の入試に挑戦するプロジェクトと並行して、AIと否応なく共存していかねばならない子どもたちについての様々な問題について書かれています。

そのひとつが「教科書が読めない子どもたち」という問題です。

もう1問、つぎの問題について考えてみてください。

次の文を読みなさい。

Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称でもあるが、男性の名前Alexanderの愛称でもある。

この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

Alexanderの愛称は(          )である。

① Alex ② Alexander ③ 男性 ④ 女性

この問題には東ロボくんは正解したそうです。それに対して子どもたちの正答率です。

全国中学生・・・38%  中1・・・23%  中2・・・31%  中3・・・51%

全国高校生・・・65%  高1・・・65%  高2・・・68%  高3・・・57%

おそろしいですね。中学生の正答率は半数に達していません。中でも中1生の正答率は1/4に達していません。四択ですから適当に答えても25%の正答率です。この問題の出典は中学1年生の英語の教科書の注とのこと。注がついていても、その注の「日本語」を理解できている生徒は全体の1/4にしか過ぎない。それが「教科書の読めない子どもたち」の最も大きな問題なのです。

「よく教科書を読みなさい」という言葉は、教師が煩雑に使う言葉です。教える側は、子どもたちが教科書に書かれている「日本語」を理解できるものとしてそうしたことを言います。それなのに、多くの子どもたちは「教科書に書かれている日本語」がわかっていないのです。

なぜ、こんなことになるのか。著者の考えです。

下の図を見ればわかります。読解能力が3、つまりほぼ真ん中あたりまで選択肢④のほうが正解の①より多く選ばれていることがわかります。つまり「Alexandraの愛称は女性である」が正解だと考える子が案外いるのです。どうしてでしょう。おそらく「愛称」という言葉を知らないからです。そして、知らない単語が出てくると、それを飛ばして読むという読みの習性があるためです。「Alexandraは女性である」ならば、文として意味が通ります。

図は「AI vs. 教科書が読めない子どもたち 新井紀子著」より

わたしも著者と同じようなことを感じます。それについはこのブログでも何度か書いています。子どもたちの教育にささやかながらも関わっているわたしとしては、子どもたちの「語彙力」を少しでもアップさせるために様々に努力をしています。うちの小学生の授業は、毎回のように「語彙テスト」からスタートします。

もうひとつ。中学生の正答率は学年が上がるにしたがって、23%→31%→51%と上がっています。これはそれなりに学校での学習の成果なのでしょう。それに対して、高校生の正答率は上がっていきません。ここらあたりにも今時の高校生の学習の問題点はあるのかなと思います。

著者はこの「基礎読解力」と学力、偏差値との相関関係についても書いています。

それについては次回

問題の解答は、もちろん①の「Alex」です(^^)

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