お薦めの一冊 「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー/プレディみかこ著」
著者はアイルランド人の夫を持ちイギリスのブライトンに住まう日本人の女性。一人息子はカトリック系の優秀な生徒が集まる小学校に通いながら、中学校は近所の問題校(作者が言うには「元底辺中学校」)に通うことになる。その中学での入学から1年半の様々な出来事を描いたものです。
お薦めの点です。
先ずは作品に描かれた「母親と息子」の姿は、中学生の息子さんをもつお母さんには「あぁ、なるほど」と肯く場面がたくさんあること。もちろん小学校高学年や高校生の息子さんをお持ちのお母さんも共感できる場面がたくさんあるはずです。そしてそこには子育てのヒントがたくさんあるはずです。
作品の中で著者は息子さんを子ども扱いせず対等な関係で様々に話をします。お父さんもそうです。自分の意見や考えをしっかりと伝えますが、決してそれを押しつけたりはしない。とにかく子どもを尊重しているんです。本の中で親子が直面するのは「人種差別、性、格差、地域の問題」などなど重いものばかりです。それなのにふたりは一生懸命に「ふたり」で知恵を絞っていきます。その姿はほんとうにすばらしいし共感できるはずです。
そうした中で子どもはすくすくと成長していきます。子どもの成長とともに親も成長していくんです。学ぶべきことがたくさんあります。できたらお子さんと一緒にこの本を読めば、新たな親子関係の構築の一助にもなると思います。
ふたつめが「多様性」について考えるきっかけになるということです。この本の息子さんが通う公立の名門小学校は多様な人たちが通う学校。人種の多様性があるのです。南米やアフリカ系、フィリピン、欧州大陸からのカトリックの移民・・・そうした子どもたちとミドル階級の英国人の子どもたちが通う学校が「良い学校」なのです。それに対して著者の息子さんが通うことになった中学校は、白人ばかりが通う学校。見渡す限り白人英国人だらけ。本の中では「多様性格差と呼ぶしかないような状況が生まれている。人種の多様性があるのは優秀でリッチな学校、という奇妙な構図・・・」とあります。
こうした状況は早晩この日本にも生まれるのではないかな、と思います。そうした意味でも様々な多様性、国籍、民族、貧富などなどとどう向き合うべきなのか、そんなことを考えるヒントがたくさんあるのです。とにかく視野を広げてくれる一冊になるはずです。
テンポの良い文体で、中学生でも一気に読める一冊です。
ぜひぜひ、親子で読んでみてください。