大学受験に強くなる教養講座/横山雅彦著
高3生現代国語のテキスト(その2)です。というよりも、大学受験を前にした高3生すべてに読んでもらいたい本の一冊です。全体で6章構成になっていて、それぞれの角度から「現代」を考察しています。
第1章 還元主義を超えて
第2章 言語とコミュニュケーション
第3章 脱工業社会の到来
第4章 ポストコロニアルな世界史
第5章 アメリカ化する社会
第6章 現代民主主義の逆説
前書きから筆者のこの本を書いた意図を抜粋しておきます。
『・・今、大学入試で起こりつつあることは、極端な二極化現象です。七割方の大学が、何としてでも学生を確保し、生き残りを図ろうと、まるで中学入試のような問題を出してお茶を濁している一方で、残る難関大学では、学部どころか大学院のゼミで課題となるような論文が、当たり前のように原文(英文)で出題されます。・・・これらの難関大学の入試問題が示している大きな特徴は、英語・現代文・小論文の間の垣根がなくなってきているということです。・・・本書の目的は、「英語と現代文と小論文は三位一体である」という前提に立ち、それらすべてに共通する読解の知的バックグランドを構築することです。受験で出題される評論は、すべてさまざまな角度から「現代」を切り取ったものです。本書では、政治・経済・社会・文化を横断的・相関的に捉え、六つの角度から「現代」という世界をダイナミックに俯瞰します。大学生になるための高校生の教養講座であり、社会人の読者にとっても、目からウロコの連続であると信じます。小論文のネタ探しとしても(それは本当は不本意なことですが)、きっと宝庫であることでしょう。・・・』
現代国語の読解問題には、その文章が書かれたバックボーンへの理解なくしては解けないものが多いのが実際です。高校の現代国語の授業では、そのバックボーンの理解のためにどれだけのことをしているでしょうか。また、多くの予備校では、過去問の演習の繰り返しで、現代文の講義を進めています。
この本の第1章にある「還元主義の問題点」「ニューアカデミズムが登場してきた理由」「演繹と帰納の違い」「批判的合理主義とは」などといったことについての理解なしでは読めない評論文はたくさんあるのです。高3現代文の授業では、夏休みまでに出来るだけ生徒たちの「教養」を高める授業にしたいと考えています。「教養」のレベルと「現代国語のチカラ」は比例していると言って良いからです。
きっと東大に合格者を何人も出しているような高校では、「フリチョフ・カプラー著/ターニングポイントー科学と経済・社会、心と体、フェミニズムの将来」なんて本を原文(英文)で読んでいるんでしょうね。それはムリだとしても、カプラーが何を考え、何を主張したかの知識理解ぐらいは大学受験生としてはしておきたいと思います。
高校受験生も同じです。県入試の共通問体であれば、「教養」なんてものはなくても問題を解くことは出来ます。それぐらい共通問題のレベルは低いからです。しかし、私立高校の入試問題や県の独自問題の国語となるとそうはいきません。湘南高校の国語の独自入試問題など「うーん」とうならせる出題になります。「教養」のレベルが問われる問題なのです。
「教養」を身につけるには、しっかりとした骨のある文章を読むことです。筆者と思考的に闘える文章を読むこと。もうひとつは「議論」をすることです。こちらはそうそした友達や場がないとムリですが。高1生、高2生も、手がかりとしてこの本を読んでみては道でしょうか。