高3生の現代文のテキスト
大学入試の現代文は評論文の出題が主になります。言語論、文明論、社会論などなど出題は多岐にわたります。そのほとんどが現代思想を駆使してて語っているのが特徴です。多くの高3受験生は、初めて大学入試問題に立ち向かうと「理解度が限りなく0パーセントに近い」という感想を持ってしまいます。
その原因は何でしょうか? また、理解度を上げるためにはどうしたら良いでしょうか?
たとえば、先週の第1回の授業で扱った問題文は「科学論」でした。「最近、デカルトは評判が悪い。脳神経科学の有名な研究者であるアントニオ・ダマシオは、1994年に『デカルトの誤り』という本を書いた・・・」といった書き出しではじまります。高3生はこの書き出しでもう青息吐息になってしまいます。さらに進んで「・・・どちらの本も、精神と物体とを峻別したデカルトの二元論が、現在に至るまでの認知科学に及ぼした影響について論じている・・・」や「・・・さらに最近のポストモダンの相対主義ならば、科学も、ある個人の世界の軟式も、すべては、単にひとつの見方、勝手な構築にすぎないと・・・」となると頭の中は『ぐちゃぐちゃ』状態になってしまいます。
生徒たちには「デカルト」「二元論」「ポストモダン」「相対主義」などといった語彙に対する知識が全くないのです。だからそうした言葉が出てくる度にもう頭がパニックになってしまうわけです。もうおわかりですよね。大学入試の現代文を読むためにはこうした語彙に対する『ある程度の知識』が必要なのです。この「高校生のための評論文キーワード100」は、そうした語彙を「ポイント」「切り口」「展開」の三つに分けて、アイウエオ順に見開きでまとめた辞書のような本なのです。
授業では、問題文に出てくる語彙をこの本を利用しながら私が解説していきます。遠回りのようですが、こうした作業を1年間続けていけば、かなり読解力が上がることになるはずです。少なくとも「デカルトの評判が悪い」という文にぶつかったとき、デカルトという人間が何を訴えていたのか、その後の評価がどうだったのか、などといった知識があるのとないのとでは、読み取りの深度はかなり違ってくるはずです。
また、この本は高校生だけではなく、お父さん、お母さんにもお薦めです。「アイロニー」「形而上」「テクスト」「構造」などなど、新聞や雑誌にも何気なく使われているのに、その意味がよくわかっていなかった語彙はたくさんあると思います。そんなときにこの本を開けば、辞書代わりとして役に立つはずです。