AIが学習計画をつくれるのでしょうか
テレビのコマーシャルで「AIがひとりひとりに最適な学習プランを作ります」というのがあります。「すごいわね。AIにプランニングをしてもらうと魔法のようにできるようになるんじゃないかしら」と思う方もいらっしゃるのでしょう。はたしてAIってそんなにすごいことが出来るんでしょうか。
子どもが学習の中でつまずいていたとします。指導者はそのつまずきの原因を探り、必要に応じてこれまでに学習してきた単元の中で戻る必要があればそこに戻して学習をやりなおさせます。この一連の流れはAIも同じことをするはずです。体系的な学習の中で、ここができないのであればあそこまで戻して学習をさせよう、ということです。
ただ、学習者は機械ではなく人間です。それもまだ精神的に未完成な子どもたちです。理屈ではわかっていても感情面で動いてしまう未熟な生きものたちです。中3の数学でつまずいていたとして「それでは小5の学習に戻ってやり直しましょう」となったときに「はいそうですね」と素直に聞き入れてくれるでしょうか。
わたしが子どもたちを指導するときにどうしているか。子どもたちのプライドを傷つけないようにしながら、自然に振り返りの学習に誘導していきます。そこで利用するのが「たとえ話」です。「たとえばね・・・」ということで目の前の問題を言い換えていきます。言い換えていく中で普通の流れとして既習の範囲の振り返りに誘導していくのです。この手法は、どんな先生も使っているものです。みなさんも、小さなお子さんに何かを教えるときに「たとえばね・・・」という手法は自然に使われているはずです。
そうなんです。AIは既習範囲の苦手を分析するのは得意ですが、そこから「ひとりひとりの生徒」にあわせたプランニングをすることは不得意なんです。結果の分析は人間にはかなわないし、ましてや、しっかりとした人間関係を結んでいる生徒と教師の関係の中で作り上げられるプランニングにかなうものはないのです。
正解がひとつしかない問題の採点を機械はすることはできても、その分析までも機械に任せることは今の時点ではできないだろうということです。教えるという行為は「血」がかよっていてこその面があるということです。それなくしては成り立たないとわたしは強く思います。