神奈川県教委を学習塾の団体で訪問してきました。 その1

7月20日の火曜日に「神奈川県教委」を「かながわ民間教育協会」という学習塾の団体として塾側のさまざまな質問を持ってうかがってきました。当日の質問と回答は「かながわ民間教育協会」のHomePageに載せられていますが、ふつうの方が読んでもなにを言っているのかわからない部分がたくさんあると思います。そこで何回かに分けてわたしの解説も交えながらまとめてみたいと思います。

高校入試 制度について

神奈川民間教育協会
普通科高校の改革については文科省でも検討されているが、神奈川県としてはどのような姿勢でいるのか。県の指定事業にもかかわらず、重点校以外の普通科高校については、募集が上手くいっていない高校が数多くある。各高校の自助努力ではなく、県としてどう支援していくのか。
県教委の岡野さん
平成28年度から3期12年で取り組んでいる「県立高校改革実施計画」(現在は「Ⅱ期(令和2~5年度)」)の中で検討しているところ。これまでの「Ⅰ期」、「Ⅱ期」の発表のタイミングに倣えば「Ⅲ期」(令和6~9年度)の発表はおそらく来年の夏から秋にかけてになるだろう。定員割れの学校については募集定員を減らすなどしている。今春の入試では新規に定員割れの学校は少なくなっている。一定の歯止めはかかっている。

【解説】少子化の中で県は県立高校の改革、再編を進めています。また、多様化する生徒、保護者の要求に応えようとさまざまなタイプの県立高校をつくっています。ただ、大きな流れの中で中堅、下位校は定員割れをする学校が増えていますし、商業科、工業科などの専門学科の学校も定員を大きく割る学校もあります。来年の夏から秋にかけてつぎの県立高校の改革、再編整備の計画が出されます。それらは県のホームページに詳細は発表されています。https://www.pref.kanagawa.jp/docs/u5t/cnt/f531868/index.html わたしは県のこうした改革はある一定の成果をおさめていると思っています。ただ、世の中の流れがそれ以上に早く、コロナ禍もあって難しい舵取りが続くのでしょう。少ない予算を効率的に使う。それが今後の流れなのかも知れません。

神奈川民間教育協会
学力向上進学重点校は増やしていくのか
県教委の岡野さん
教育長が10校程度と議会で答弁している。とはいっても数を決めて計画的に増やすということではない。あくまでもそれぞれの学校の努力しだい。

【解説】学力向上進学重点校は今年度から川和高校を加えて、湘南高校、横浜翠嵐高校、柏陽高校、厚木高校と5校が指定されています。また、その進学重点校を目指す進学重点エントリー校には、大和高校、希望ヶ丘高校、横浜平沼高校、鎌倉高校など13校が指定されています。これらの学校では「いわゆる難関大学と呼ばれる大学への現役合格の実績をあげる」ことが目標のひとつとされていて、現に横浜翠嵐高校の今春の東大合格者数に顕著なようにすばらしい実績を上げつつあります。川和高校がエントリー校から重点校に上がったように、今後とも実績がともなえば他の高校も引き上げていくが、何校までのように数字優先ではないですよ、という回答でした。進学重点校5校が他の県立高校を引っ張っていく姿はとても良いのではないでしょうか。

神奈川民間教育協会
内申の不公平感はそのままにしておくのか
県教委の岡野さん
教育委員会としては「内申の不公平がある」という認識はない。H15年あたりの絶対評価の嵐が吹き荒れたときに県教委としても評価の公平性について手を入れて整理をしたと考えている。

【解説】当然の回答ですね。教育委員会が「内申の不公平」を認めるわけにはいかないでしょう。内申については「絶対評価」である評価を「相対的な評価が必要な入試」に利用することがそもそもの問題だとわたしは考えます。これは県教委の問題ではなく文科省の課題です。いつも言ってますがわたしは「絶対評価」は賛成です。子どもたちの到達度をはかる評価ですから。しかし、到達度を測る評価を数字で合計して入試に使うのはおかしいです。昔の「ア・テスト」のように客観的な評価をはかるものが必要だと思います。保護者の皆さんも、今の学校成績の付き方のおかしな点については問題意識をもっていて欲しいです。

神奈川民間教育協会
面接点を一律で同じにしている高校についてどう思うか。面接で逆転が起こることは好ましくないのか。面接もやらなければならない、というが、実際に上位校で面接点の差をつけていないところが多いのも関わらず、受験生はこのコロナ禍でも1日無駄に危険を冒してまで入試会場に足を運ばなければならなかった。いい加減、教育委員会も目を覚まして実質意味の無いことが行われているのなら、是正すべきところは是正すべきではないか。一度制度を決めたからといってどんなに意味の無いことが分かっても変えないのはどうなのか?
県教委の岡野さん
受験生がしっかりと観点にしたがって面接の準備をしている結果として差が付かないのは当然だろう。いろいろな意見があると思うが、ある一定の成果は出ている。面接で逆転が起こることが好ましくないとも思っていない。もうそろそろ改善の時期じゃないかという意見があることは理解している。中学校の校長先生に伺うと、質問の趣旨のような意見を言う方もいらっしゃる一方で、面接検査に向けた模擬面接などの指導を通して、生徒自身がなぜ高校に進学するのかをあらためて整理して自覚する、キャリア教育のよい機会の一つとなっているので面接検査は続けたほうが良いという意見もある。ひとつの考え方でしかないが、面接をオプションにすることも今後はあるかもしれない。

【解説】コロナ禍の中、今春入試でも「入試、特色、面接」と3日間も受験会場に足を運ぶ必要があり、それにも関わらず面接点で差が付かない上位校の現実がありました。そんなところから出た質問です。ただ、この面接試験が導入された経緯についてもわたしたちはよく知っておく必要があります。上位校で差が付かなくなっていますが、前もって提示されている「観点」でのみ評価されるのですから、しっかりと準備をしておけば評価される制度そのものは良いものだといえます。実際、子どもたちの様子を見ていると、面接の練習の中で「どうして高校に行くのか」というはっきりとした目的意識が芽生えていくのは間違いありません。メリット、デメリットがありますが、コロナ禍の中でデメリットが鮮明に浮き上がってきたことは事実です。

ここから先は次回に続きます。いずれにしても、こうした機会を10年にわたって持っていただき、塾側の失礼な質問にも怒ることなく回答いただけた県教委の方には感謝しかありません。なお、【解説】の文責は宮﨑にあります。

回答いただいた方

神奈川県教育委員会 教育局 教育監  岡野 親 さま

神奈川県教育委員会 教育局指導部高校教育課 専任主幹兼指導主事 岡野 正之 さま

神奈川県教育委員会 教育局 参事兼指導部高校教育課長兼県立高校改革担当部長 増田 利克 さま