仕事で自己実現?
「仕事で自己実現しようなんて考えるなよ。」
ということだ。
彼が今まで受けてきた学校教育の中では「仕事による自己実現」というのは当然のことだし、それは今の若者たちにとっての常識だ。各企業のホームページを見ても、「この会社で自己実現しよう」みたいな文句がこれでもか、というほど並んでいる。
みんな「キレイゴト」だ。
そもそも日本の社会は資本主義社会で、企業はもうけるために存在する。もうけることに貪欲でない企業などあるはずはないし、そんな企業はとっくにつぶれている。仕事で自己実現しよう、なんて甘い考えで就職したら、もうけるためにすべてを犠牲にする社会の仕組みと真っ向からぶつかって、「お前、なに考えてるの。そんな甘い考えで生きていけるわけないだろ。」とはじき飛ばされるに決まっている。
食品偽装だ、何だとマスコミは騒ぐけど、そもそも企業は「もうけるため」なら手段を選ばないようにできている。騒いでいるマスコミだって、視聴率のためならどんな番組だって作っているはずだ。視聴率を上げなければもうけはあげられない。「エコ」なんてものもみんなそうだ。「地球環境のためにマイバックを」とスーパーは呼びかける。レジ袋を減らして経費節減したいだけなのだ。レジ袋を減らしても地球環境への影響はほとんどない。そうした企業の成り立ちを忘れて、仕事で自己実現なんて甘いことを考えてはいけない。
さらにこんな考え方もある。
現代社会は成長をしても低成長の時代だ。企業がそう多くの利益を出せないのだから、仕事でがんばってもそうそう収入が増えるわけではない。そこで企業は考えた。仕事への付加価値をつくり、そんなに賃金を出さなくても仕事へのモチベーションを社員に維持させる方法を。それが「仕事で自己実現」ということだ。この言葉は、企業のだましのテクニックだということだ。
企業は働くものに「生きがい」を与えるために存在するのではなく、「もうけるために」あることを忘れちゃいけない。
ちょっと毒のある言葉だけど、「仕事で自己実現をする」なんてことは、決して考えてはいけないんだ。