止揚(aufheben)

問い合わせにいらっしゃったあるお母さんとの会話。

「大事なのは親がしっかりと現状を理解し、子供に目標をしめすことだと思います。」
「でも、親が目標をしめしたってしょうがないでしょ。自分から目標を持たないと」
「いや、目標や意思というものは自然発生的に生まれてくるものじゃありませんよ。誰かが“こうしたら”って目標を示したとします。それに対して、“いやオレはこうしたい”っていうものがはじめて生まれてくる。そんな中で自分が進みたい方向って見えてくるんじゃないでしょうか。」
「そうですか? 私は子供にお金をかけて勉強させてもしょうがないと思っているんですよ。自分からやろう、って気持ちが生まれてこなければ何をやってもムダじゃないですか。」
「いや、だからこそ、子供に積極的に働きかけないとダメなんですよ。何かを否定するところから次の段階がはじまる。子供が否定するような何かを親がぶつけていかないと、頑張ろうなどという意思は生まれてきませんよ。」
「・・・」

親が子供に“こうしたら”って言うことがそんなにまずいことなのだろうか。多くの方が「自分からやろうとしないかぎり・・・」とおっしゃる。また「本人の意思に任せる」ともおっしゃる。確かにそうだ。

問題は「やろうとする意思」をどう喚起するかということだ。また喚起もせずに任せられてしまった本人はどうしたら良いのだろう。意思は外からの“はたらきかけ”によってしか生まれてこないと私は考える。現状を否定されることによってしか生まれてこないと考える。

わかってもらえただろうか。

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